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機那サフラン酒本舗 極彩色の鏝絵

鏝絵(こてえ)というものをご存じでしょうか。
左官職人がこてを使って漆喰で蔵の壁などに作るレリーフのことですが、私は建物に興味が出るまでは知りませんでした。

訪問:2023年7月

鏝絵の蔵

長岡市の中心から少し南へ行った摂田屋というエリア。
そこに機那サフラン酒製造本舗があります。最寄り駅は宮内駅です。
左の建物が1894年に建てられた主屋で、そこに繋がっているのが今回お目当ての蔵です。

「吉」の字は主の吉澤仁太郎から。
左端に「佐伊」とあります。

これが鏝絵ですか。。手前の面を見ただけでとても興味が引かれます。
この蔵は1926年に建てられ、中越地震を経て2008年に修復。
現在では登録有形文化財になっています。

こちらの解説板は鏝絵だけでなく、下部のナマコ壁にも着目されていますね。
見ていて飽きないのは鏝絵の魅力だけではないのでしょう。

北の面はこの蔵の魅力を存分に味わうことができます…!
先ほどの東面には神獣が描かれていましたが、こちらには様々な動物と植物が窓の戸に描かれています。

近くで見ると、漆喰の厚さに感心してしまいます。
色どりもとても鮮やかで、鏝絵の沼にはまりそうと感じてしまう…笑
作者は河上伊吉という左官(東面にあった"佐伊"は官の吉という意味でしょう)ですが、ここにある物以外に作品は確認されていないようです。

ちなみに、この窓は長岡空襲の時以外は閉めたことが無いらしい…とガイドの方から聞きました。

主屋入り口の南面。これから中に入ってみようと思います。

内部は展示室となっているみたいです。
主屋から蔵に入るところには恵比寿と大黒。
めでたい。こちらもお見事。

その隣は鶴と亀。縁起が良いですね。

主屋の中はサフラン酒の当時の広告や、昭和の物品が並べられていました。
サフラン酒はサフランを原料とした薬用酒で、このお屋敷を建てられるくらいヒットしたようです。

蔵の二階もかなり見ごたえがありました。
ホーローや木など、様々な看板。

こちらは鏝絵がある窓ですね。
主屋の欄間はこんな金ぴかだったらしい。
サフラン酒によって一代で財を成した吉澤仁太郎の世界観が伝わってきます。

衣装蔵の鏝絵

主屋の隣、先ほどの鏝絵の蔵の反対側には衣装蔵も併設されています。
こちらが建てられたのは1916年と、鏝絵の蔵よりも先に完成しています。
左官工は同じく河上伊吉。初期の作品と言っていいでしょう。
こちらは修復がされていないようで、劣化は進んでいますがそれでも鮮やかな色を見ることができます。

土台の通風孔の扉にビンがかたどられているのも見逃せないポイントですね。
遊び心が感じられます。

今回は鏝絵に注目をしましたが、こちらの機那サフラン酒本舗には他にも色んな建物があります。
戦後になって事業が衰退した後はこちらの建物群も荒れていたようですが、2000年代以降に有志の手によって整備されるようになったということです。
今後、主屋も公開される予定のようなので、再訪したい場所だなと思いました。